民事信託とは?
民事信託とは、
資産の所有者(委託者)である人が、資産を託される方(受託者)に資産を預け、預けた目的に従って管理してもらう ことをいいます。
受託者は、
託された資産から利益を受ける方(受益者)のために、資産を管理・承継することになります。
自益信託の場合
このように、委託者から受託者に資産の所有権を移転するということが、民事信託の最大の特徴といえます。
今なぜ民事信託が注目されているのか?
高齢化と認知症の増加
超高齢化社会と言われ、認知症が社会問題化しているという背景があります。
判断能力があるうちから、将来の資産・相続のことを考え、対策をすることが必要となっています。
遺産分割問題の多様化
相続の問題が複雑になってきており、従来の法定相続分の考え方や遺言書では対応できない問題が多くあります。
民事信託では、従来の相続対策ではできなかったことが実現できるようになっています。
民事信託の5つの機能
自由な財産管理が可能
信託行為によって財産の利用方法をあらかじめ決めておけば、その信託財産については「家族のために活かす」ことや「投資的な行為」も可能になります。
従来の制度である成年後見制度では実現できなかった生前での自由な財産管理が可能になります。 ( 民事信託活用事例 )
管理・処分権と収益権の分離
民事信託を利用すると実質的には委託者から受益者に権利を移転できます。ただし、形式的には受託者が委託財産を管理・運用しています。
したがって、権利だけを移転できる「条件付贈与」と言えるのです。この結果、受益者が勝手に委託財産を処分しないようにできます。
遺産分割の詳細を自由に決められる
条件付きの財産承継や期間や分割の手法を用いて、相続人にと手より 納得のできる相続のかたちを作り出すことができます。
家族間での対話を通じて、条件付きの財産承継や期間や分割の手法を用いて相続人にと手より 納得のできる相続のかたちを作り出すことができます。
3代先まで財産の承継先を決められる
民事信託では「3代先(3代目)」まで財産の取得者を定めておくことができます。
具体的には、信託契約(信託設定)から30年が経過するまでの間に、2回受益者が死亡するまで、受益者をあらかじめ定めておくことが可能です。 ( 民事信託活用事例 )
相続後に残された人の生活保障
財産管理が難しい人のために確実に生活費等を届けることができます。
民事信託活用事例
ケース 1
Aの死後は妻Bに賃貸アパートを相続させ、妻Bが亡くなったら2人の子供(長男C、長女D)のうち長男Cに当該賃貸アパートを引き継がせたいと考えている。
従来は、
従来の遺言の場合は「自分の次の代」までしか財産の移動を決めることができませんので、Aの死後100%長男Cに相続されるかどうかは保証できません。
信託を活用すると、
「受益者連続信託」の活用で、「自分の2代先、3代先」まで指定をすることができます。
現在の受益者の有する受益権が当該受益者の死亡により、あらかじめ指定された者に順次承継される旨の定めのある信託のことをいいます。
今回のケースでは、委託者Aは自分の不動産を信託財産として
「委託者兼受益者:A 受託者:長男C」とする信託契約を長男Cと結びます。
その契約の中で、Aが亡くなった後は妻Bが受益者となり、賃貸アパートの収益の給付を受けるようにし、次に妻Bが亡くなった時にはこの信託を終了して残余財産を全て長男Cに承継させる旨をあらかじめ決めておくことでAの希望通りに相続させることが可能になります。
ケース 2
87歳のAは不動産を複数所有し、この不動産からの家賃収入によって生活していますが、最近物忘れが多くなり、認知症の不安も出てきました。
Aは、資産運用を長男Bに行わせつつ、これまで通り家賃収入を得て生活したいと考えています。
従来は、
収益不動産を長男Bに生前贈与し、長男Bに扶養してもらうという方法がありますが、多額の贈与税の負担が考えられます。
信託を活用すると、
「自益信託」の活用で余分な税金をかけずに財産管理・運用を行うことができます。
自益信託とは、委託者と受益者が同一人物になる信託の形です。
自分の財産から生じた利益を自分自身が受け取るため課税関係は発生しません。
今回のケースは、父親Aが委託者、長男Bが受託者となり、Aが所有する収益不動産を、Bに信託する契約を結びます。
これにより不動産の所有権は長男Bに移転しますが、収益不動産から得られる家賃収入の受益者をAに設定することにより、家賃収入を得ることができます。
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